株式会社グランシーズは、全国50施設超の宿泊施設経営と、合計20億円以上の補助金獲得を支援してきた実績に基づき、「新事業進出補助金」における宿泊業の採択可能性を検証します。
新事業進出補助金の採択率見込み
2025年より公募が始まった「新事業進出補助金」は、事業再構築補助金の後継モデルであり、最大9,000万円の大型支援制度です。
公募要領に具体的な採択率は示されていませんが、前身である事業再構築補助金の実績(第1回~第13回)を参考にすると、30%〜50%程度の水準に収まると予想され、「狭き門」と言えます。
宿泊業が採択で有利とされる3つの根拠
30%〜50%という厳しい競争の中で、宿泊業は、他産業に比べて相対的に高い確率で採択される可能性を持っています。その理由を見ていきましょう。
理由1:国の政策的な最重要分野であること
宿泊業は、国が掲げる「観光立国推進」「地方創生」「インバウンド誘致」等の将来ビジョン実現に不可欠な分野です。この政策的な追い風により、補助金や税制優遇などの公的支援が積極的に投入されやすい環境にあります。
しかし、観光の成功が必ずしも地域の中小企業や住民の所得向上に直結していないという構造的な課題(例:ニセコや白馬における海外資本参加)が存在します。
真の地方創生を実現するには、地域経済の担い手である中堅・中小企業が優位性を確立し、収益を地域内に還元する仕組みが不可欠です。公的支援は今後も積極的に行われると見込まれます。
理由2:過去のデータに基づき「採択優位性」が高い
事業再構築補助金(全13回)の採択データを、国内の会社法人数構成比と比較することで、「宿泊業の事業計画」が相対的に補助金に採択されやすいか分析しました。
業種 | 採択件数 | 優位性指数 |
製造業 | 17,065件 | 2.61 |
情報通信業 | 3,735件 | 2.57 |
生活関連サービス業 | 4,422件 | 2.54 |
宿泊業・飲食業 | 5,447件 | 2.16 |
専門技術サービス業 | 2,229件 | 0.76 |
卸売業・小売業 | 6,966件 | 0.62 |
建設業 | 2,939件 | 0.34 |
不動産業 | 1,350件 | 0.22 |
- 分類可能な採択件数 48,552件(全採択件数 76,764件から分類不能 28,212件を除外)
この分析は、全国内法人数構成比と補助金採択件数構成比(総務省「経済センサス」)を比較した「採択優位性指数」を用い、相対的な採択のしやすさを明らかにしています。
過去の実績データに基づくと、宿泊業・飲食業は、国内法人数構成比が5.19%と低いにも関わらず、採択構成比が11.2%と、2.16倍の採択優位性が裏付けられます。これは、宿泊業が補助金を活用する上で非常に有利な計画であることを示しています。
理由3:宿泊業は計画達成率が高い
中小企業庁が公表した事業再構築補助金分析データ(2025年6月公表)では、採択を受けた宿泊業の事業効果の高さが示されています。
指標 | 宿泊業の達成率 | 全業種の達成率 |
売上目標達成率 | 74% | 63% |
付加価値目標達成率 | 55% | 48% |
宿泊業は「収益化率が最も高い産業群」に分類され、売上目標達成率も74%と全体平均を大きく上回っています。これは、建物改修や広告宣伝といった投資が即効性を持ち、すぐに予約増や売上に結びつくという業種特性が背景にあります。
高い効果性は、新事業進出補助金はじめ、補助金交付を検討する上では強力な根拠となり、高確率が採択される根拠の一つとなるのではないでしょうか。
宿泊業が補助金に不利となる3つの要因
宿泊業の計画達成力の高さが示された一方、審査や市場競争の観点から見ると、宿泊業特有の不利要因も存在します。
理由1:「革新性」や「独自性」の訴求が難しい
宿泊業の典型的な投資は、業界全体で広く普及している取り組みであり、「新事業進出」や「高付加価値事業の取り組み」といった補助金の目的に対し、「革新性」や「独自性」を強く打ち出すのが難しい傾向があります。
理由2:特定テーマに集中する
事業再構築補助金では、特定のテーマ(例:グランピング、サウナ、ワーケーション施設)に申請が集中し、結果として「同質的な計画群」として審査側から認識され、不採択となる結果となりました。一時的ブームに依存する計画は、その後の「持続可能性」が厳しく問われる可能性があり、採択に向けて高い評価を得ることが困難です。あくまで経験則に基づく推測ですが、2025年時点で仮にグランピングやサウナの事業計画を策定し、補助金申請したとしても、その採択確率は10%程度だと見ています。
理由3.インパクトが弱い
補助金審査においては、「日本の産業構造の転換」や「経済成長への貢献」といったマクロな視点が評価に含まれています。
製造業やIT産業が「革新的な新技術の開発」といったインパクトのある計画を訴求できるのに対し、宿泊業の計画の多くは「サービス向上」や「地域への貢献」といった、評価の難しい定性的で曖昧な内容になりがちです。これにより、審査上の注目度が低くなり、インパクトを持つ産業に比べて不利な評価を受けるリスクがあります。
宿泊業で補助金交付を勝ち取るには
宿泊業が持つ「国の政策的な追い風」と「高い計画達成実績」という有利な点を最大限に生かしつつ、「革新性の不足」や「流行への集中」といった不利な要素を回避する、論理的かつ戦略的な計画の構築が不可欠です。
新事業進出補助金は最大9,000万円という大規模な投資チャンスであり、宿泊業にとっては極めて有利な状況にあることは間違いありません。しかし、採択を勝ち取るには戦略がすべてです。
弊社は、自ら全国50施設超の宿泊施設を経営する事業者であり、宿泊施設のプロデュースとして20億円以上の補助金獲得を支援してきました。
実務経験に基づく宿泊業の課題と、提供するデータの確かさ、審査で評価される論理構成を熟知しているからこそ可能な、採択に向けた最適な戦略、補助金交付後の事業化・収益化に向けた実務的なアドバイスを提供いたします。
ぜひ私たちと一緒に公的支援制度も活用し、宿泊事業への新規参入や、既存施設の再生に向け、まずはお気軽にご相談ください。