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2026年3月26日に締め切りを控える「新事業進出補助金」の第3回公募 。
採択を勝ち取るために今、最も警戒すべきは、公募要領に明記された「過剰投資の抑制」という審査基準です。
これは一言で言えば、「特定の業種やテーマに申請が集中した場合、市場飽和のリスクがあるとして大幅に減点する」というルールです 。つまり、世間で盛り上がっているビジネスは、審査員から「ブーム便乗」とみなされ、それだけで「要注意業種」として厳しい審査の対象になります。
では、具体的にどのような業種が狙われやすいのか?
2025年10月1日に発表された第1回採択結果を分析すると、特定の設備導入や事業形態に案件が極端に偏っている実態が浮かび上がってきました 。本記事では、第1回のデータをロジカルに分類。第3回公募において減点リスクが高いテーマを抽出し、その壁を突破するための差別化戦略を解説します。
新事業進出補助金とは
「新事業進出補助金」は、社会情勢の変化に対応するために、中小企業が思い切った事業展開や新分野への進出を行うことを支援する中小企業庁の補助金です 。
補助金の目的
新事業進出補助金は、既存事業の枠を超えた「新事業」への挑戦を後押しすることを目的としています。単なる設備の更新ではなく、市場分析に基づいた「新たな市場への進出」や「ビジネスモデルの転換」が評価の対象となります 。
補助金額と補助率
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- 補助金額: 従業員数に応じ、750万円から9000万円まで補助されます
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- 補助率: 上限額の範囲で投資額の1/2を国が補助します
対象となる主な経費
建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、広告宣伝・販売促進費など、新事業の立ち上げに必要な幅広い経費が対象となります 。
審査項目「過剰投資の抑制」の正体
多くの申請者が陥りやすい落とし穴が、審査項目に含まれる「過剰投資の抑制」です 。
通常、事業計画書を作成する際には、綿密な市場分析を行い、自社の優位性を証明します。しかし、この補助金制度においては、個別の計画がどれほど優れていても、「他社との重複」によって評価が大幅に下げられる仕組みが存在します。
「市場分析が正しい」だけでは不十分な理由
公募資料によれば、各申請者が実施する市場分析は、あくまで申請時点の情報に基づいたものです。しかし、実際に事業を実施する段階では、社会情勢や他社の動向により、その優位性が消滅している可能性があります 。
過剰投資としてチェックする点
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- 優位性の消滅リスク: 計画策定時に認められた優位性も、補助金を受けて参入する他社が乱立すれば、市場で勝つことは難しくなります 。
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- 一時的流行(ブーム)への懸念: 特定の期間に、類似のテーマや設備に関する申請が集中している場合、それは長期的な成長ではなく「一時的な流行」による過剰投資であると判断されます 。
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- 大幅減点の実施: 「過剰投資」と判断された申請については、事業計画通りの遂行が困難であるとみなされ、別途審査によって大幅な減点が実施されます 。過去には、シミュレーションゴルフ、グランピング、サウナ事業等が一時的流行とみなされ、大幅に減点、内容に関係なくほぼ採択不可となりました。
つまり、申請者自身がコントロールできない「他社の応募動向」が、自社の採択・不採択を左右する決定的な要因となります。現在2026年1月ですが、第3回の公募申請(3月26日締切)に向け、第1回で顕著になった「ブーム便乗」とみなされやすいテーマを把握し、そこからいかに抜け出すかという戦略が不可欠です。
採択結果から推測されるブーム便乗型の要注意業種
第3回公募において、どのような事業が「過剰投資」の審査対象となる可能性があるのか。第1回の膨大な採択データから見えてくる傾向を分析します。
分析手法について
本章で挙げる業種は、2025年10月発表の「第1回公募 採択案件一覧」に記載された1,000件超のデータを、以下の観点で分類したものです。
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- 頻出キーワードの集計: 採択案件の事業計画名から、特定の設備やサービス形態が繰り返し出現しているものを抽出 。
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- 地域的な重複状況の確認: 同一エリア内、あるいは全国的に類似のビジネスモデルが並行して採択されている実態を調査 。
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- 公募要領との照合: 「一時的流行」とみなされるリスクについて、実際の採択案件数との整合性をロジカルに検証。
これらのデータに基づき「供給過剰」と判断され、審査上の留意点となる可能性があるカテゴリーを抽出しました。
ブーム便乗の要注意業種
以下の業種は、第1回で非常に多くの案件が採択されており、第3回では「他社と何が違うのか」という独自性が、より厳格に問われる可能性があります。
① クラフト飲料(ビール・ジン等)の製造販売
地域資源の活用をテーマにした小規模醸造所や蒸留所の開設が、全国各地で数多く採択されています 。
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- 採択例の傾向: 「地域ブランド型プレミアムクラフトジン」 や「〇〇のクラフトビール工場」 など。
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- 懸念点: 特定の観光地や商圏内で類似の飲料が乱立した場合、過剰投資とみなされるリスクが否定できません。
② ドローンによる調査・点検・撮影サービス
建設・インフラ業界からの進出として、ドローン導入による点検・調査・計測サービスが非常に高い頻度で出現しています 。
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- 採択例の傾向: 「ドローンによるインフラ点検サービス」 や、「3Dドローンによる文化財のデジタルアーカイブ」 など。
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- 懸念点: 汎用的なサービス内容に留まる場合、価格競争や市場飽和の懸念から、実現性が厳しく精査される可能性があります。
③ 高付加価値・プライベート宿泊施設(ヴィラ、一棟貸し、サウナ)
「非接触」や「ラグジュアリー」をキーワードとした、サウナ付きヴィラや一棟貸し等の宿泊事業が、全国の景勝地等で集中しています 。
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- 採択例の傾向: 「高付加価値型ヴィラによる事業創出」 や、「富士山を望むプライベートヴィラ」 など。
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- 懸念点:特定エリアでの急激な供給増は、将来的な収益性低下のリスクとして指摘される可能性があります。
④ 高付加価値ペット関連ビジネス
ペットフードの製造や愛犬と過ごせる特化型施設、サロンといった事業が多方面で見受けられます 。
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- 採択例の傾向: 「日本初のオーダーメイドペットフード製造」 や、「テーマパーク型ドッグサロン」 など。
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- 懸念点: 「健康」「高級」といったコンセプトが重複しやすいため、後発案件にはさらなる独自性が求められる可能性があります。
⑤ EV(電気自動車)関連インフラ・部品製造
脱炭素トレンドを背景に、EV充電ステーションや関連部品製造、リサイクル事業への参入が一定数存在します 。
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- 採択例の傾向: 「EV車向けインフラ整備」 や、「EV時代のモーターコア製造」 など。
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- 懸念点: 政策的トレンドである一方で、大手企業の参入も多い分野であり、中小企業の「勝ち筋」がロジカルに問われる可能性があります。
これらの業種は、市場の「ブーム」を捉えている一方で、事務局が危惧する「過剰投資」のボーダーライン上に位置している可能性があります。
一方で、これらがブームになるのは、市場が拡大成長しているからに他ならず、例えば当社のペット向けヴィラは一般向けヴィラの売上の1.2倍~2倍です。補助金を活用し、成長市場に参入しない手はありません。第3回公募では、単にこれらのトレンドを追うだけでなく、「ブームが終わったとしても、自社が成功し続けられる根拠」をどれだけ示せるかが、採択の鍵と推測されます。
【実績データ】
弊社が運営する山梨県のこちらのヴィラの愛犬家向け客室の売上は、一般客室の約1.2倍です。この他にも当社では、愛犬家向け宿の実績に基づく、詳細なマーケティングデータを保有していますので、愛犬家向け宿を開業したい、補助金を活用したい事業者様は、問い合わせフォームよりご相談ください。

「要注意業種」が採択される差別化戦略
市場に類似事業が溢れる可能性がある場合、単に「最新の設備を導入する」という説明だけでは、過剰投資の懸念を払拭できません 。審査を突破するためには、以下の2つのアプローチで事業計画を練り上げる必要があります。
設備導入に頼らない自社独自の「強み」の掛け合わせ
補助金で購入する機械や建物は、資金さえあれば競合他社も導入可能です。差別化の核心は、他社が真似できない「自社固有の強み」との掛け合わせにあります。
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- 既存事業の顧客基盤・データの活用: 例えば宿泊事業への進出なら、単なるヴィラの建設ではなく、既存事業で培った特定の優良顧客リストや、独自の集客チャネルを活用する計画にします 。
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- 独自の専門ノウハウとの融合: ドローン点検事業であれば、「ドローンを飛ばすこと」ではなく、「自社が持つ特殊な建築士の知見で、他社には不可能なレベルの解析レポートを提供する」といった、属人的な強みを強調します
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- 地域コミュニティや地権者との独自の繋がり: その土地で長年信頼を築いてきた企業だからこそ可能な「地域一体型の運営体制」など、後発のブーム便乗組には真似できない強力な差別化要素となります
「ブーム便乗」懸念を論破する事業計画の書き方
審査員が懸念する「ブーム便乗」や「二番煎じ」の疑念を晴らすには、一般的・抽象的な市場データではなく、極めて具体的かつ論理的な「勝ち筋」を示す必要があります。
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- 「マクロの流行」ではなく「ミクロの空白」を突く: 日本中でクラフトビールが流行っていても 、自社が狙う半径数キロメートルの商圏内において、なぜそのサービスが不足しているのかを、ユーザーへの聞き取り調査や競合他社の実名調査などを交えて具体的に証明します。
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- ターゲットを極限まで絞り込む: 「愛犬家向け」といった広いターゲットではなく、例えば「大型犬を多頭飼いしている富裕層に特化した施設」のように、市場を細分化(セグメンテーション)し、そのニッチな層においては自社が第一選択肢になる根拠を提示します 。
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- 「後発ゆえの優位性」を逆手に取る: 先行して採択された事業を徹底的に分析し、それらがカバーできていない「顧客の不満点」や「見落とされているニーズ」を特定。自社はその課題を解決する「次世代型」であると位置づけます。
ロジカルな「必然性」が合否を分ける
「流行っているから参入する」のではなく、「自社の強みを活かすなら、今この市場に出るのが最も合理的であり、かつ他社には代替不可能である」というロジカルな必然性こそが、ブーム便乗の疑いを晴らし、採択を勝ち取るための最大の武器となるでしょう。
「ブーム」を「持続可能な事業」へ進化させるため
本記事では、新事業進出補助金第1回公募の採択結果を独自の視点で分析、次回以降の公募において「ブーム便乗」と判断されるリスクがある業種の傾向を解説しました。
事務局が懸念する「過剰投資」は、単なる申請数の多さだけを指すのではありません。真に危惧されているのは、「流行に乗っただけで、独自性や継続性のない無計画な参入」が公的資金によって助長されることです。
第3回公募に向けて重要なのは、以下の3点に立ち返ることです。
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- 客観的な視点: 自社の計画が、全国で採択されている類似案件の「焼き直し」になっていないか。
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- 論理的な裏付け: なぜ「今」、その「場所」で、その「事業」でなければならないのかという必然性。
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- 持続可能な戦略: 補助金による設備導入後の、5年、10年先を見据えた収益モデルの確立。
新事業への進出は、企業の未来を決める大きな決断です。流行という追い風を活かしつつも、それに流されない「地に足のついた事業計画」こそ、厳しい審査を突破する道となります。
宿泊業における採択の壁と、専門的支援の必要性
特に、要注意リストに挙げた「宿泊事業(ヴィラ・サウナ付き施設等)」は、参入障壁が低く見える一方で、今後は採択難易度は飛躍的に高まることが予想されます。
全国的に採択案件が集中しているこの分野、特に富士山周辺や淡路島、白馬等の有名観光エリアにおいて、単に「豪華なヴィラを建てる」といったハード面のみを強調した計画書は、もはや差別化を証明することは困難です。
運営のオペレーション、収益性の緻密なシミュレーション、そして地域特性を捉えたマーケティング戦略など、実務に精通した事業者のみが語れる「リアリティのある事業計画」が合否を分けます。
ブームを追う「投資家」ではなく、市場に根を張る「実務家」としての視点が何より求められています。
「自分の事業計画が一過性のブームとみられないか不安だ」
「採択に向け、より精度の高い差別化戦略を練りたい」
宿泊業の現場で培った市場を読み解く力とデータ分析に基づき、貴社の新事業進出をバックアップします。
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